ドイツ教育とドイツ社会のリアル
先日、YouTubeチャンネル「世界史解体新書」の土井昭さんの動画に特別ゲストとして出演させていただきました!
https://youtu.be/ApKdSWZVEho?si=tCNlPEJBky3EVkfC
土井さんとは、同じ「敗戦国」というバックグラウンドを持ちながら経済発展を遂げた日本とドイツを比較しながら、教育や歴史、そして今のドイツが抱えるリアルな社会問題について対談してきました。
今回は、動画でお話しした内容をまとめてお届けします。
1. ドイツの教育制度:16歳までの義務教育と「自立」への選択
ドイツの教育制度は、日本とは根本的な考え方が異なります。
まず、義務教育は16歳までですが、その後の進路選択は非常にシビアです。
· 高校卒業試験「アビトゥーア」がすべて
大学に進学するためには、高校卒業試験(アビトゥーア)に合格する必要があります。
これは一発勝負の試験ではなく、普段の成績や授業への参加度、さらには先生との面談までが点数化されます。
この点数によって、進める大学の学部(医学部など)が決まってしまうため、非常に重要です。
大学進学はわずか3割
日本は90%以上が高校へ行き、5〜6割が大学へ進学しますが、ドイツで大学に行くのは約3割程度です。
なぜなら、中学校を卒業した後に「マイスター」を目指し、企業で働きながら専門学校に通う道を選ぶ人が多いからです。
「すぐにお金が欲しい」という人はこちらの道を選びます。「やる気がないならやめろ」の世界
中学の時期から「やる気がないなら進学はやめておけ」と言われ続けます。
高校・大学は、本当の意味で「勉強したい人」が行く場所というイメージです。小学校から留年がある
成績には非常に厳しく、小学校1年生であっても、文字が読めないなど「ついていけない」と判断されれば、もう一度同じ学年をやり直すことになります。警察が家に来る?
日本のような「引きこもり」はドイツの制度上難しいです。
学校に行かないと、警察が家までノックしに来て「お子さんはどうしましたか?」と確認に来るほど、教育を受ける義務が徹底されています。「良い学校」のために引っ越す親たち
ドイツの親たちも、実は非常に教育熱心です。
特に最近は、移民の多い地域の学校で教育レベルが下がってしまうことが問題になっているため、お金に余裕がある親は、移民の少ない地域の学校へ子どもを通わせるためにわざわざ引っ越しをします。弁護士を使ってまで学校を選ぶ
住所によって行くべき学校が決まってしまうのですが、どうしても違う学校へ行かせたい親は、弁護士を雇って手続きを行い、希望の学校へねじ込むことさえあります。
それだけ、子どもが卒業後に職に困らないように、親は必死なのです。
2. 歴史教育のリアル:ナチスの過ちを「飽きるまで」学ぶ
歴史教育、特にナチスに関する教育は、二度と同じことを繰り返さないために徹底されています。
あらゆる科目で繰り返される反省
歴史の授業だけではありません。国語(ドイツ)の授業で『アンネの日記』などの小説を読んで分析したり、映画を鑑賞したり、実際に博物館や美術館へ足を運んだりと、多角的に学びます。
「頭の良い子なら飽きるほど聞かされる」と言われるほど、時間をかけて「あの時やったことは良くないことだった」と教え込まれます。自国を「かっこ悪い」と感じる子どもたち
こうした教育を受けた結果、ドイツの子どもたちは「ドイツという国は、過去に悪いことをしたかっこ悪い国なんだ」という自虐的な感覚を抱くことが多いです。海外に出て気づく自国の良さ
しかし、大学生になって初めてフランスなどの海外へ行ってみると、「あれ、ドイツの高速道路はしっかりしているし、意外とドイツもいいじゃないか?」と気づくんです。
中だけの教育を受けていると「フランスの方がご飯が美味しいし……」と隣国を羨ましく思ったりもするのですが、外に出ることで初めて客観的に自国を見て、自国の良さを実感するのです。
3. 右派政党「AfD」の台頭と、揺れる歴史認識
今、ドイツで大きな注目を集めているのが右派政党「AfD」です。
ドイツでは右派政党「AfD」が支持を伸ばしており、社会に大きな変化が起きています。
「反省ばかりではいけない」という声
AfDは「反省ばかりの歴史教育ではダメだ」という主張をしています。
昨夏の指示率では1位になる地域も出てきており、今の教育や政治のあり方に疑問を持つ人が増えているのが現状です。経済格差と支持層
就職が弱い地域(特に旧東ドイツなど)では、「移民に仕事を取られるのではないか」という不安からAfDを選ぶ人が多いです。
一方で、経済的に余裕がある地域の人は「移民は社会を助けてくれる存在」とポジティブに捉える傾向があります。
4. 移民問題:手厚すぎるサービスと文化の摩擦
ドイツは移民に対して非常に手厚いサービスを提供していますが、それが議論を呼んでいます。
「優しすぎる」国への不満
ドイツでは、滞在資格を得るためにドイツ語の習得が必須ですが、その教育費などは国がすべて無料で提供しています。
また、国から移動手段としての自転車がプレゼントされたり、食事が提供されたりします。
こうした手厚いサービスに対し、「優しすぎないか」という国民の声も増えています。文化や宗教の違いによる衝突
イスラム圏の女性が顔を隠す「ブルカ」などは、ドイツ国内で大きな議論になっています。
「信頼関係を築くためには顔を見せるべきだ」というドイツ側の考え方と、宗教的な規律の間で摩擦が起きています。
また、残念ながら一部の移民による犯罪(性犯罪など)が大きく報道されることもあり、人々の不安を煽る要因になっています。
5. 旧東ドイツと西ドイツの「いま」
壁が崩壊して30年以上が経ちますが、旧東と旧西の対立や格差は完全にはなくなっていません。
東側の再生と課題
旧東ドイツ地域は、自然が豊かで非常に美しい場所ですが、経済的にはまだ復活しきっていない部分があります。
一方で、政府が東側の大学に多額の予算を投入してリフォームしたため、施設が非常に新しく、学費や生活費を抑えたい西側の学生が東側の大学へ進学するという動きも活発です。かつては「ロシア語」を学んでいた
旧東ドイツ出身の人は、学校で第2外国語としてロシア語を習っていました。
一方、私が育った西側ではロシア語を学ぶチャンスすらありませんでした。
こうした教育背景の違いも、世代によっては残っています。いまだに残る「統一税」
かつて、東西の格差を埋めるために「統一税」が導入されました。
現在はかなり縮小され、高所得者や大企業を対象に存続されています。
アメリカとロシアの影響
西側はアメリカの影響を受け、女性が主婦になる文化やファーストネームで呼び合う文化が入りました。
一方、東側はロシアの影響で共働きのための保育所が充実していたり、今でも苗字で呼び合ったりと、受けた影響の違いが残っています。
6. 他国との関係
島国の日本と、地続きのドイツでは「周りの国との付き合い方」に対する意識が違います。
EUとしての結束
ドイツは戦後、フランスやポーランドなど周りの国といかに仲良くするかということに力を注いできました。
EUのメンバーとして、たとえ他国の経済が苦しくても税金を投じて助け合うという姿勢は、過去の反省に基づいた「平和への執念」とも言えるかもしれません。若者の交流と興味の対象
現在のドイツの若者の間では、かつて一番人気だった日本語に代わり、経済的な理由から中国語、あるいはK-POPなどの文化的な影響で韓国語への興味も高まっています。
7. 交流こそが平和への鍵
最後に、日本の教育や隣国との関係について、私がドイツでの経験から感じていることをお伝えしたいと思います。
まず、日本の歴史の授業を見学した際、先生が一人で話すスタイルが多く、映像が少ないと感じました。
ドイツの授業では、教科書だけでなく映画などの映像資料を多用し、それについて生徒同士でディスカッションをするのが一般的です。
過去の出来事を「自分たちの問題」として捉えるためです。
そして、その教育は教室内だけではなく、 フランスの家庭にホームステイをしたり、ギリシャへ卒業旅行に行ったりと、隣国と直接触れ合うプログラムが充実しています。
なぜ、そこまで交流にお金をかけるのか。それは、「個人レベルで友達ができ、交流が増えれば増えるほど、歴史を繰り返さないための強い鍵になる」と信じられているからです。
日本も韓国や中国などと、1週間程度の短い留学や交流増やすなど、若い世代が互いの国へ気軽に行ける環境を作るなど、そこで「個人の友達」ができることが、国同士平和な関係へと変えていく一番の近道になるかもしれません。
土井昭さんとの対談は、私にとっても自国の教育や社会を改めて見つめ直すとても貴重な時間となりました。
「もっと詳しく知りたい!」という方は、ぜひ「世界史解体新書」の動画をチェックしてみてください。
私のYouTubeチャンネルでも、ドイツ語学習だけでなく、ドイツ人が日本を楽しむ様子など、リアルな視点での動画をアップしていますので、あわせてご覧いただけると嬉しいです!