海外IRとIR通訳の部屋

こんにちは!

このコラムは、私の証券会社勤務、事業会社のIR業務、通訳業務での経験をもとに、海外IR、IR通訳などについて書きたいと思っています。海外IRやIR通訳に関心がある方の役に立てばうれしいと思ってます。よろしくお願いします!

 

さて、第1回と第2回は株式投資の世界での“トップダウン”と“ボトムアップ”との違いです。取材の相手となる投資家がどちらのタイプかどうかで、企業のIR担当者、IR通訳のどちらにとっても事前の準備、当日の対応が変わってきます。

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【第1回】“トップダウン”と“ボトムアップ”

株式投資の世界でのトップダウンとボトムアップ

株式投資の世界でのトップダウンとは、金利・為替・石油価格など経済の大きな要因に注目して、これらの要因(マクロ要因とも言います)の今後の方向性を予測し、予測した方向通りになれば恩恵を受けるセクターや銘柄に投資するやり方です。

一方、ボトムアップとは、個別企業の分析に集中して、その企業の本来の価値がどれだけあるかを見極め、その価値と株価を比較して投資するやり方です。

 

トップダウンのやり方では、今後石油価格が上がると考えて石油会社の株を買ったり、航空会社の株を売ったり(航空会社にとって、石油と価格が連動するジェット燃料は大きなコスト要因)するのが一例です。

投資の前提となるマクロ要因の読みが当たりすれば、同じセクターの銘柄をまとめて買ったり、まとまった資金を運用できるので効率は良いのです。

 

トップダウンは当たれば大儲け?

大昔、一つのマクロ要因に賭けて10億ドル以上稼いだ人がいます。

1992年当時、ユーロの始まる前でドイツ・マルクやフランス・フランなどの通貨があった時代に、主なヨーロッパの通貨の為替レートは事実上固定されていました。ところが当時イギリスの景気がかなり悪くなり、イギリスがこの事実上の固定為替レートを維持ができなくなるだろうという憶測が広まり、イギリス・ポンドが大きく売られて結局この固定為替レートシステムから離脱するという出来事がありました。

 

この時にジョージ・ソロスという投資家が少なくとも10億ドル以上稼いだといわれました。“イギリス・ポンドの固定為替レートからの離脱”という一つのマクロ要因の読みで稼いだわけです。(ジョージ・ソロスは当時非常に有名な投資家でした。今では投資よりも自由主義を世界で広めようとする慈善家として有名で、最近世界でナショナリズムが広がる中で、ナショナリストが攻撃する対象として名前が出るようになってます。)

 

このように当たれば効率は良いのですが、マクロ要因の予測は株式市場だけではなく多くの金融市場の参加者がやっているので、予測を当てる競争は非常に厳しいです。競争相手が多いということで考えると、楽な競争ではありません。

 

ボトムアップは競争相手が少ない分有利?

一方、ボトムアップは企業ごとに詳細に調べる必要があるので手間はかかりますが、為替や金利のように市場参加者の多くが読みを争うほど競争は厳しくないので、特にアナリストもあまりカバーしていないような中小型株などでは、手間をかけただけ有利になるチャンスがありえます。

 

IR担当者にとっての違いは?IR通訳にとっての違いは?

さて、あなたが企業のIR担当者だとして、トップダウンとボトムアップのどちらの投資家と付き合ったほうが良いか考えてみましょう。また、あなたがIR通訳を行う時に、それぞれの投資家で事前準備、当日の心構えはどれだけ変わるでしょうか?

 

この続きは次回のPart 2で、、、

 

 

 

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【第2回】“トップダウン”と“ボトムアップ”

前回のPart 1 では、トップダウンの投資家とボトムアップの投資家の違いについて説明しましたが、このPart 2では、IR担当者、IR通訳にとっての違いを説明します。

 

IR担当者にとってのトップダウンとボトムアップの違いは?

さて、まずIR担当者としての観点からトップダウンの投資家とボトムアップの投資家の違いについて考えてみましょう。

もちろんあなたの会社を評価して買ってくれればどちらでも良いのですが、IR担当者としては、単に株を買ってくれるだけではなく、あなたの会社の株をできるだけ長く保有してもらうことも大事です。その点ではボトムアップの投資家がより長く付き合ってくれる可能性があります。

 

トップダウンの投資家は、彼らのマクロ要因予測に基いて恩恵を受けられる会社を探しているだけで、極端に言うと恩恵を受けられる会社であればどこでもいいのです。だから、買う会社の細かい内容には興味を持ちません。ある意味、あなたの会社がたまたま彼らのマクロ要因の読みに合致しているから興味があるので、読みに合致しなくなればすぐ興味の対象から外れます。

 

一方、ボトムアップの投資家は特定の会社に注目して、手間をかけて分析するので、常に株を買ってくれるかどうかはわかりませんが、常に注目してくれる(買うポテンシャルがある)投資家です。

また別の機会に書きますが、ボトムアップの投資家は今後減っていく可能性があるので、あなたの会社に注目してくれるボトムアップの投資家がいれば、それは株を買ってくれる“お客さま”として貴重な存在です。

 

取材時の質問が違う

トップダウンとボトムアップの投資家はIR取材を受ける時に大きな違いがあります。ボトムアップは会社固有の話を多く聞いてくるのでわかります。逆に、トップダウンは会社固有の話を殆ど聞かないことが多くなります。これは、私が事業会社でIR業務を担当していた時に経験しました。

 

小売業界での経験

私が大手小売企業でIR業務を担当していた時は、トップダウンの投資家の質問で多かったのは、消費の動向がどうか、これからどうなるか、販売価格は上がっているか、これから上げるか、原材料・仕入れ価格の上昇を販売価格に転嫁できるか、などです。

この時に感じたのは、大手小売企業が外国人投資家には日本の消費のバロメーターのように思われていて、私の会社に投資するかどうかに関係なく、消費動向を理解するために取材の依頼が入り、色々質問を受けたことがよくありました。中には、消費に関する質問ばかりで、会社のことは何も聞かずに取材が終わったこともありました。こういう時は取材の最初からわかる時も多いので、取材対応のやる気がかなり失せます。

 

人材サービス業界での経験

私は以前人材サービス、具体的には再就職支援サービスの会社でIR業務を担当していました。再就職支援サービスとは、会社がリストラして従業員を削減する時に、その従業員の再就職をサポートする仕事です。

日本はリストラが必要だから再就職支援は必ず伸びるはず!と決め込んで取材に臨み、あまり会社の細かいことを聞かなかった外国人投資家が多かったです。これもある意味トップダウンの投資家ですね。

こちらに興味を持ってくれるのはうれしいのですが、期待と会社の実態があまり乖離すると後で大変な目に合うこともあるので(これについてはまた別の機会に書きます)、リストラは”four letter word“(英語で”禁句“を指す言葉です)なので、日本では企業がなかなかやりたがらないと言って相手の期待を押さえるのが大変だったくらいです。

 

IR通訳にとっての違いは?

さて、IR通訳の立場から見ると、ボトムアップが大変でトップダウンが楽です。ボトムアップは会社ごとに話の内容が違うので、予習が大変です。また、投資家も会社のIR担当者も互いにその業界や会社の事がわかっている前提で話をするので、業界用語も含めてついていくのはなかなか大変です。

一方、トップダウンは話がマクロ要因に集中するので、業界ごとにどのマクロ要因が重要かどうか変わりますが、予習の程度はずいぶん楽になります。

 

少し慣れないと分かりませんが、トップダウンとボトムアップの投資家の区別がつくとIR通訳の準備も当日の対応もやりやすくなります。

 

ご参考までに、それではまた!Hideto Eguchi

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